没後30年、今こそ再評価したい漫画家・坂口尚。大判復刊『VERSION』を機に、その圧倒的な画力と深遠なテーマに触れる。

はじめに

2025年2月20日にVERSIONという漫画が復刊します。

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時代的にも今こそ読んでおいてほしい作品なので、坂口尚の長編3部作と合わせて彼の紹介をしたいと思います。
坂口尚は1995年に49歳で亡くなられたのですが、その作品は今も多くのファンを魅了し続けています。

特に、その圧倒的な画力と、歴史や人間心理を深く掘り下げたテーマ性は、他の漫画家とは一線を画すものです。 浦沢直樹の言葉を借りるなら、坂口尚は「手塚治虫と大友克洋の絵柄をつなぐミッシングリンク的な存在」なんです。

坂口尚の長編三部作と言われているのが『あっかんべェ一休』『石の花』『VERSION』です。 先の2作品は、一休さんの一生、仏教、諸行無常を描いた大河ドラマ的なものだったり、戦時下の生々しさ、奪うもの奪われるものの両端を描きつつ、善悪を中庸に描いた傑作なのですが、少し敷居が高く感じるかもしれません。 そもそも仏教や戦争ものに興味がない方には、なかなか手に取りづらいかもしれないし。

その点『VERSION』は、AIが自我を持ったらという現代的なテーマを扱っており、比較的内容に入りやすいと思います。 まずは今回復刊される『VERSION』を読んで、そこから『あっかんべェ一休』や『石の花』に触れてみるのがおすすめです。

1. 現代的なテーマで入りやすい『VERSION』

坂口尚さんの長編三部作の一つであり、長らく入手困難だった幻の作品『VERSION』。その内容は、AIが自我を持ってしまったらどうなるかというスタートから、「我とは何か」を問う壮大なスペクタクル。

ちょうど数日前からdeepseekの登場でまたAI業界が騒がれていますし、今の我々からしたらそう遠くない未来の話で非常に想像しやすい内容です。

また、AKIRAの大友克洋にも並ぶくらいのすさまじい画力です。 僕は文庫しか所持していないので、大判で見れるのがいまから待ち遠しい。

わかりやすい敵としてめちゃくちゃ太った人間が出てくるところもハルコンネン男爵からの文脈を感じ取れて濃いSFって感じも良いです。

『VERSION』の復刊は、坂口尚の世界をより深く知るための良い入口になると思います。

2. すきっすきでおなじみの一休さんの生涯を描いた『あっかんべェ一休』

室町時代、南北朝の動乱期を生きた一休宗純を主人公にした『あっかんべェ一休』。 一休の幼少期から晩年までを、その人間的な葛藤や、権威に屈しない自由な生き様を、坂口尚ならではの緻密な絵で描いています。

この作品は、亡くなる直前まで連載されていたもので、その絵柄もまさに「手塚、大友のミッシングリンク的な絵柄」という言葉がぴったりの、デフォルメから映画のような写実的な絵柄まで幅広く楽しむことができます。

一休の生涯を通して、当時の仏教界や政治の腐敗、庶民の苦しみを描き出した本作。 既成概念にとらわれない一休の姿は、摩耗している現代人にこそ読んでほしい。

晩年に描かれた作品だけあって、絵柄は完成形っといった感じ。 特に、青騎士版1巻の133ページの見開きは圧巻です。

単なる歴史漫画としてだけでなく、人間の本質に迫る作品として読みごたえがあります。

3. 戦争の悲惨さと人間の尊厳を描く『石の花』

舞台は第二次世界大戦下のユーゴスラビア。ナチスドイツの侵攻と、民族間の対立に翻弄される人々の姿を描いた本作。

序盤も序盤、主人公はほぼ全てを失うところから始まり、戦時下の苦しい生活を余儀なくされます。 戦時下というだけでも重いのに、さらにユーゴスラビアというチョイスが憎いです。 多民族国家間での民族間の争いも同時に起こるため、単純な1国家同士の戦争よりもレイヤーが分かれていて、より複雑な内容となっています。

絵柄は長編三部作の中では最もアニメーションっぽいキャラデザだなと感じています。80年代中盤の作品なので、以降は絵柄を時代に合わせていったなんだろうなと変遷を感じられます。

様々な視点、角度から読めるので、個人的には最も読み応えがあるなと思ってます。

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副読本も存在してる

『あっかんべェ一休』『石の花』は親族の方が運営しているSNSにて副読本が売られていることを知り、手に入れました。 チャンスがあれば合わせて読んでみてください。

最後に

深遠に触れるとかかっこいいこと書いたけど、難しいテーマを扱った作品が多いので、ぜひご自身で買って読んで深さを確かめてほしいです。

今回の大判復刊を機に、まずは『VERSION』から、ぜひ坂口尚の世界に触れてみてください。

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